南海電鉄のセミナーに代表の龔 軼群が登壇しました。

4月24日に開催された南海電気鉄道株式会社主催のセミナーイベント「海外人財と日本企業の共創~海外人財の社内受け入れ体制の具体的な整備方法~」で、代表の龔 軼群が登壇し、企業の経営者を中心に約200人の方々が集まる中で、文化的多様性の包摂の重要性についてお話ししました。
こうした機会を作っていただいた南海電鉄の皆様に感謝申し上げます。

当日は、「なんばスカイオコンベンションホール」が開場すると、大阪・関西万博の公式キャラクターであるミャクミャクが歓迎してくれました。

南海電気鉄道株式会社社長の岡嶋信行様、特定非営利活動法人 国連UNHCR協会の川合雅幸様のごあいさつの後、一般社団法人Welcome Japan代表理事 金 辰泰様からDX人財のグローバル化が遅れている日本の現状とWelcome Japanの難民包摂の取組みについて講演がありました。

次に、「英語人財採用において日本語能力 N1 は本当に必須条件か?」をテーマに、奈良先端科学技術大学院大学 UEA・特命助教の谷口直也様とTERAKOYA Academia代表のシャラド ライ様のトークセッションが行われ、最後に代表の龔より「海外人財の社内受け入れ体制の具体的な整備方法」について講演いたしました。
以下、講演内容についてご紹介させていただきます。

海外人財を雇用する上で、なぜ受け入れ体制の整備が重要なのか?

日本における外部環境・社会全体の変化

日本の将来予測によれば、2070年には総人口が9,000万人を割り、高齢化率は39%の水準になることが予想されています(厚生労働省「将来推計人口の概要」)。
また、リクルートワークス研究所の「未来予測2040」の労働力の需要と供給を見ると、職種別に時期に違いはありますが、いずれも大幅な供給不足となります。
そのため、多くの産業は外国人労働者に依存することになり、2070年には労働人口の12%以上が外国籍になると言われています(ニッセイ基礎研究所「将来人口推計に基づく2070年の外国人労働者依存度について」)。

受け入れ体制の整備は、大きく2つの観点から必要

一つは「企業の社会的責任ー人権とビジネス」の観点です。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の3つの柱のうち、第二の柱にある人権を尊重する企業の責任には、外国人労働者の権利も含まれています。

もう一つは「人材の獲得と定着」の観点です。ここでの「人材の獲得」とは、外国籍の獲得という範囲に留まらず、これからの社会を担う若者、Z世代の人材獲得です。
Z世代にとって、外国籍やLGBTQ、障がい者含め、DE&Iに取り組む企業への志望度が高いという調査結果が出ています(株式会社学情のwebアンケート調査)。
つまり、外国籍を雇用することがダイバーシティの観点で良いと考えられており、若者の志望度が高まる可能性が高いと捉えることができます。

次に、人材の「定着」については、主に外国籍に関する内容であり、以下の表はLiving in Peaceと東京大学・筑波大学の研究者との実態調査により浮かび上がった課題です。

(「移民・難民学生のキャリア形成と共創する社会へ―学生の就職活動経験と企業の採用に関する調査報告書―」については以下のリンク先をご覧ください。)

受入れ体制における文化的多様性の包摂の重要性
~Cultural Diversity Indexのご紹介~

文化的多様性の包摂とは何か

「文化的多様性」とは、国籍、⺠族、⼈種、肌の⾊、⽂化・慣習、⾔語、宗教等の違いが存在していることです。

また、「包摂」は、一つの事柄をより大きな範囲の中に包みいれることです。

「平等・公正・正義」という考え方

文化的多様性の包摂を実現するうえで大切なのは「平等・公正・正義」という考え方です。

平等=条件の異なる⼈々に同じ対応を⾏うこと
公正=結果が同じ状況をもたらすよう、条件に応じて異なる対応をとること
正義=制度や慣習などに埋め込まれたそもそもの障害、すなわち特定の集団に不利益をもたらしやすい制度や慣習等を可能な限り取り除くという処置をとること

「平等」の考え⽅だけではすべての⼈の働きやすさを実現できないことがあるため、「公正」や「正義」の考え⽅を取り入れる必要があります。

(この点ついては、Cultural Diversity Indexの実践教材のP5「図3:平等・公正・正義の考え方」を参照ください。)

働く環境における文化的多様性の包摂を目指すCultural Diversity Index

言語や文化、慣習、宗教など多様な人々が、言語や文化の違いによるさまざまな障壁や働きづらさを抱えている状況があります。
働く環境における文化的多様性が包摂されている状態、つまり、お互いの違いを認識し、理解し合い、尊重し合いながら、誰もが自分らしく生き生きと働けることが重要になります。

そこでわたしたちは、日本で初めて、Cultural Diversity Indexという指針を策定しました。これは、組織の文化的多様性(民族、人種、肌の色、文化・慣習、言語、宗教等)の包摂を評価する指標であり、取り組みの指針です。

(Cultural Diversity Indexの詳細は、次のリンクをクリックください。)

Cultural Diversity Indexを導入するメリット

この指標を導入するメリットは、大きく3つになります。
①外国籍社員など多様な社員の雇用、労働環境の改善における判断・指針になる
②組織としての姿勢を対外的に示せる – DE&Iへの取り組み、人的資本経営
③人材獲得につながる – これからの担い手になるZ世代、外国籍社員

具体的な整備方法のご紹介

1.経営幹部のメッセージ

「国籍、⺠族、⼈種、肌の⾊、⽂化・慣習、⾔語、宗教等の違いにかかわらず社員の活躍の機会が拓かれている」という経営幹部のメッセージは極めて重要です。
なぜなら、この会社で働きたい、と思うかは、経営者が目指すビジョン、姿勢やマインドでほぼ決まるからです。

2.差別禁止の明文化

組織として差別を認めないことを明言することが、外国籍社員の心理的安全性を守るため、これも極めて重要なポイントです。
会社が差別禁止を明確にすることで、他の社員にも意識づけることができます。

3.職場環境に関するアサイン

本⼈の希望や適性・スキルをヒアリングし、考慮した上で判断する制度設計になっているでしょうか。
本人の希望を聞かず、「外国語が堪能だから」という理由で会社側が一方的なアサインを行うと、社員は会社でのキャリア形成に希望が持てず、退職につながってしまうかもしれません。

4.育成

業務で必要な言語学習プログラムを受講する機会を用意しており、誰でもアクセス可能にしていることは、業務効率を上げるために必要です。
具体的な支援には、「日本語能力検定やTOEICの受験費用や、オンラインスクールの受講費用のサポート」だけでなく、「無料で学べるツールの紹介」も含まれます。

5.社員交流

社員の出⾝国⽂化や慣習について学ぶ機会を持つことで、お互いの文化や慣習を尊重している姿勢と信頼関係を構築することができます。
入社研修や社内勉強会といった方法だけでなく、料理を一緒に作る、民族衣装を着てみるなど、楽しみながら社員交流を図るやり方もあります。

6.社内広報

全社で発信する情報は、日本語と外国籍社員の言語の両方で情報発信することで、情報を受け手として、しっかり認識されていることが相手に伝わります。
逆に、社員全員に周知が必要な情報を日本語だけで発信してしまうと、日本語が堪能でない社員は、自分が情報の受け手の一人だと認識せずに、齟齬が生まれることもあります。

おわりに

Living in Peaceは、今後1年以内に少なくとも20社に働きかけ、Cultural Diversity Indexを採用・実施することを目指し、「第2回 グローバル難民フォーラム」において宣言しています(宣言についてはこちら)。
引き続きさまざまな組織・企業の方々と対話する機会を持ちたいと考えておりますので、興味・関心がある場合には、こちらからお問い合わせください。

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