難民を取り巻く課題

現在、世界には様々な理由で住み慣れた居住地を追われ、避難を余儀なくされている人々が8,000万人以上います。このページでは、世界の難民問題と、Living in Peaceが支援に取り組む、国内の難民の方々を取り巻く課題についてお伝えします。

難民とは?

「難民」の定義は多義的で、「政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々」と広く解する「広義な難民」もある一方、法的には狭く解されており、1951年の「難民の地位に関する条約」では、「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた」人々と定義されています。

日本は1981年に難民条約に加入しており、入管法においては上記の内容を引用して難民を定義しています。

また近年では、他国に逃れた難民以外に、紛争などによって住み慣れた家を追われたものの、国内にとどまっている、あるいは国境を越えずに避難生活を送っている「国内避難民」も増加しています。国内で適切な支援を受けられなかった場合、これらの人々も国境を越えて難民となる可能性があります。

世界の難民問題

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の年間統計報告書「グローバル・トレンズ・レポート 2020」によると、2020年末時点で、世界中には暴力や迫害によって居住地を追われ、避難を余儀なくされている人々が約8,240万人います。これは、世界の人口の1%、日本の人口の67%に相当します。そのうちの約半数は子どもたちです。

8,240万人のうち、4,800万人は国内にとどまる国内避難民ですが、他国に逃れてUNHCRの支援対象者となる難民は2,065万人に上ります。他にも、パレスチナ難民、国外に逃れたベネズエラ人、その他庇護希望者など、居住地を追われて支援を必要とする人々がいます。

出典:UNHCR「Global Trends」より作成

パレスチナ難民(UNRWA支援対象者)を除くと、国外に逃れた難民の出身国の3分の2以上は、シリア、ベネズエラ、 アフガニスタン、南スーダン、ミャンマーの5ヵ国に集中しています。

出典:UNHCR「Global Trends」より作成

難民の大半は近隣国に逃れるため、結果として世界の難民の85は開発途上国で受け入れられています。日本を含む先進国における受入れは、たったの15%です。

出典:UNHCR「Global Trends」より作成

日本の難民問題

日本では2016年以降、毎年1万人以上の人々が難民として庇護を求める申請をしています。2020年は申請者数が前年比6割以上減少の3,936人となりましたが、これは新型コロナウィルスの感染拡大の影響で入国者自体が激減したことが背景にあるとされています。

しかしながら、日本で難民と認められる人々は、毎年わずか数十人です。2020年には、申請者3,936人中、44人が難民として認められました。

出典:法務省「我が国における難民庇護の状況等」より作成

また、これらのデータを国籍別で見ると、南アジアからの申請者が多いものの、認定者はアフリカ諸国・アフガニスタン・シリアが多いことが分かります。申請者と認定者で、国籍にギャップが生じてしまっているのが日本の現状です。難民として保護されるべき人を全て保護することによって、難民の方々が日本社会で安心して生活できるような環境を整えることが急務です。

出典:法務省「令和2年における難民認定者数等について」より抜粋・作成
出典:法務省「令和2年における難民認定者数等について」より抜粋・作成

日本語の壁の問題

難民として認定された人々が日本で日常生活を送るにあたって、大きな壁として立ちはだかるのは日本語の言語の問題です。

難民であると認定された人々は、文化庁が行う難民に対する定住支援事業のひとつ、「条約難民及び第三国定住難民に対する日本語教育事業」の対象となります。そして、日本への定住に必要とされている最低限の基礎日本語能力の習得を目的とした日本語教育プログラムを受講することができます。コースは2種類用意されており、昼間学習する人向けの6か月コースは1日6コマ、夜間に学習する人向けの1年コースは1日3コマとされています(1コマ45分で、計572時間)。

しかし、多くの日本人が英語学習で経験しているように、語学は一朝一夕で身に付くものではなく、毎日少しずつ、長期的に学習していく性質のものです。これと同様に、難民の方々が日本語を身に付け、日本語で不自由なく生活できるようになるまでには多くの時間がかかります。

また、難民の中には、来日する前に受けた迫害等による身体的・精神的なダメージを抱えていたり、経済的な余裕がなかったりなどの様々な事情から、なかなか日本語学習に集中することが難しい方々もいます。こうした個々の事情に配慮しつつ、長い目で難民の方々の日本語学習をサポートする仕組みが必要です。

日本での就職における問題

就職活動においても、やはり言語の問題は大きな障壁となります。

外国人の採用、特にいわゆるホワイトカラーかつ正社員の募集においては、その採用条件として高い日本語能力(日本語能力試験<JLPT>におけるN1、N2程度)が求められることがほとんどです。N1、N2の数値的な認定目安によると、N1は日本語を900時間程度学習したレベル、高度の文法・漢字(2,000字程度)と語彙(10,000語程度)を習得している、N2は日本語を600時間程度学習したレベル、すなわちやや高度の文法・漢字(1,000字程度)と語彙(6,000語程度)を習得している、とされています。

出典:日本語能力試験公式HP

しかし、身体的・精神的・金銭的な困難を抱えている難民の方々にとっては、N2を取得するのに認定目安の600時間以上かかるケースがあっても不思議ではありません。これらのことを勘案すると、文化庁からの日本語教育支援だけでは、難民の方々がホワイトカラーかつ正社員として就職できるレベルの日本語を身に付けることは困難だということがわかります。つまり、行政からの日本語教育支援だけでは、最悪の場合日本語が原因で就職できず、就職できたとしても日本語を必要としないサバイバルジョブを選択せざるを得ず、ますます日本語を使わず、日本語が一向に上達しません。その結果、来日前には専門性の高い職に就いていた難民であっても日本語が障害となって自分の専門性を活かした仕事に就けず、結果として経済的な自立・安定が遠のいていく…といった負のサイクルに陥ってしまいます。

また、日本における就職に係る様々な慣習、特に新卒一括採用は、難民の方々にとって全く馴染みのないものです。そのため、日本語で記載・発信された就職活動の情報にアクセスできないうちに、いつの間にか就職活動の機会を逃してしまった、というケースも散見されます。

このように難民の方々が日本社会で経済的に自立して生活できるようになるためには、日本語の習得や日本の就職における慣習の理解が不可欠であり、そのための支援が非常に重要です。

難民2世の子どもたちの抱える問題

ここまでは来日した難民全般としての問題でしたが、最後に日本で育つ難民2世の子どもたちの抱える問題についても考えてみましょう。

難民をはじめ外国ルーツの子どもたち(成人した場合も含む)は、進学・就職など様々な場面で、生きづらさを抱えているケースがあリます。その背景には、情報格差、経済的格差、言語格差など様々な格差が考えられます。また、母国(親の出身国、ルーツとなる国)と日本の文化の間で揺れ動くアイデンティティ形成の複雑さや、母語を持たないこと、文化継承の難しさなどの課題もあります。

難民2世の子どもたちが日本社会で孤立しないよう、彼らの抱える課題を把握すると共に、彼らの成長やアイデンティティ形成に寄り添う支援を考えていく必要があります。

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