日本の子どもを取り巻く課題

子どもは権利の主体であり、その尊厳が守られるべき存在です。

1994年、日本は子どもの諸権利が適切に保障されなければならないと宣言された「子どもの権利条約」(1989年国連採択)に批准しました。しかし、それから30年ほど経た現在においてもなお、日本で生きるすべての子どもたちの育ちが保障されているとはとても言えないというのが現実です。

1.締約国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める。
2.締約国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。

子どもの権利条約 第6

子ども時代に、育ちの過程で逆境経験(Adverse Childhood Experiences : ACEs)が重なってしまうと、成人してから心身の健康状態や社会的達成などで、顕著なマイナスの影響が現れることが明らかになっています。

しかしそうした逆境を経ても、しかるべき環境で成長することができれば、その後において子どもたちはさまざまな困難を乗り越えて、人生を豊かに生きていくことができます。

Living in Peaceは、これらの逆境が生じうる環境を少しでも改善するともに、その後の暮らしをさまざまなかたちで保障することを通じて、「すべての子どもが可能性を諦めなくてよい社会」の実現に向けて活動しています(活動概要はこちら)。

このページでは、Living in Peace が改善に取り組む、子どもたちが置かれた困難や逆境について概要をお伝えします。

子どもの貧困

「子どもの貧困」(Child Poverty)とは、子どもが相対的貧困の状態にあることを指した言葉です。日本は現在、この「子どもの貧困率」が非常に高い状況にあります。

具体的には、日本では7人に1人の子どもが相対的貧困下(2人世帯であれば世帯収入が約200万円以下、3人世帯であれば約250万円以下)に置かれているとされています。

さらに、ひとり親世帯の場合、母子世帯、父子世帯の貧困率はそれぞれ50%、20%を超えており、これはOECD加盟国のなかでも最悪の水準です。

また、経済的な困窮はそれ自体で問題ですが、さらに虐待や孤立といった深刻な事態を招く主要因にもなるという点でも、解決されなければならない問題だと言えるでしょう。

子ども虐待

「子ども虐待」(Child Abuse)とは、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトという四つのカテゴリーからなる、子どもへの不適切な対応の総称です。

虐待は、子どもの心身の発達を決定的に妨げるだけなく、中長期の治療やケアを必要とする精神的な疾患を併発させるという問題をも孕んでいます。

この30年間で児童虐待相談対応件数は留まるところを知らず、その数は年々、急激な上昇を続けています(2019年度は全国で19万件超)。

虐待問題の認知が進み、面前DVなどが心理的虐待とし定義されるようになるなど、それまで隠れていた問題が明るみになったことは肯定的な側面と言えますが、今後これほどの数の虐待をどう予防していくのか、また性的虐待など依然として発見されづらい問題をどう見つけていくかが、いっそう大きな課題になっています。

子どもの孤立

「子どもの孤立」(Social Isolation in Childhood)とは、子どもが家庭、学校、その他地域のなかで居場所が見い出せずに孤立し、適切なサポートが得られていない問題的状況を指します。

近年では、多くの調査によって「どこにも居場所がない」「相談する相手が誰もいない」と孤立を感じている子どもが、日本に決して少なくないことが明らかになりました。

子どもが孤立する背景はさまざまです。貧困や虐待といった家庭の問題が、家庭の外で人とつながることを困難にしていることなども分かりはじめています。

社会のなかでの孤立は、解決すべき問題の発見を遅らせるばかりか、自尊感情などをも蝕み、子どもの生きる力を奪います。

実際に日本は、OECD加盟国のなかでも子どもの自殺率が高いことなどからで、子どもの精神的な健康度が最低水準とまでいわれています。「子どもの孤立」は虐待などと比較してまだ世間的な認知が進んでいません。しかし確実に解決しなければならない問題であるといえるでしょう。

社会的養護の課題

親や兄弟姉妹と暮らす家庭が、子どもにとって適切な養育環境になりえない場合、子どもは一時保護を経て、里親家庭や児童福祉施設で暮らすようになります。

こうした、保護者の役割を代替する社会的な枠組みを「社会的養護」(Foster Care)、あるいは「代替養育」(Alternative Care)といいます。

現在、日本では0歳から18歳まで約4.5万人の子どもが、社会的養護のもとで生活しています。その多くが生活を送っているのは、乳児院や児童養護施設などの施設環境です。

一方、欧米では社会的養護における里親制度の推進が早くから進められてきました。これは子どもの発達を考えると、特定の養育者との密接で安定した関係を育むことがきわめて重要であるためです。

一方で日本の場合、里親家庭に措置されている子どもは僅か12%程度。今後は、里親委託の割合を増やしつつ、施設をより家庭的な環境に近づける更なる努力が欠かせないといえるでしょう。

また、社会的養護の子どもたちの多くが虐待を経験しており、また発達上の特性も相まって特別なケアや配慮の必要性が年々高まっており、より専門的な養育体制の充実が求められているほか、適切な家庭支援を行うことで、できるだけ多くの子どもが一日でも早く家庭に戻れるようにすることなども求められています。

一方、18歳までを社会的養護のもとで過ごす子どもたちのその後の社会的達成も、現状で一般的なものと大きな開きがあり、選択肢を広げるための取り組みが喫緊の課題になっています。

地域の課題

上記で紹介した課題は、いずれも限られた子どもや家族の問題だけではありません。

平成以降の社会的な停滞は、様々な社会課題とともに、誰でもそうした課題の当事者になりうることを明るみにしました。

たとえば子どもの問題を扱う公的機関である児童相談所は多忙を極め、定員を超えて子どもを保護する一時保護所も少なくありません。

一時保護された子どもの多くは、元の家庭に戻っていきます。それら家庭の抱える問題も、より個別で複雑で、見えづらいものになっています。

こうした状況に対し、特定の支援機関や支援者が個別の支援を積み重ねていくことの限界は、はっきりしています。

必要なのは、「地域」(Community)という視点に立ち戻り、市民と専門家、児童福祉と教育、民間と行政等々が、既存の壁を取り払い、同じ地域のなかで、子どもを中心につながろうとすることです。

子どもがどのような家庭、どのような地域に生まれても、必要な支えを得て、その家庭、その地域で育っていける社会を実現するために、それぞれの地域ごとに固有の努力が求められているといえるでしょう。

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