お金の教育事業

Living in Peaceは、「社会的養護下の子どもが、今後の人生に必要なお金の知識を身に着けることにより、生まれ育った環境に関わらずもっと自由に生きる」というゴールを達成するために、お金の教育事業を行っています。

進学しづらく、中退しやすい子どもたちの状況

社会的養護下の子どもたちは、「進学しづらく、中退しやすい」状況におかれていると言われています。

たとえば児童養護施設出身者の高校卒業後の大学進学率は、全国平均「76.1%」に対して「41.5%」と、30%以上低くなっています。

また、児童養護施設出身者については進学率だけでなく、中退率においても厳しい状況になっています。大学の中退率は、全国平均の「2.7%」に対し、施設出身者の中退率は「28.6%」と非常に高くなっています。

進学率中退率
全国平均76.1%2.7%
児童養護施設出身者41.5%28.6%*
*進学後 4 年 3 カ月が経過した時点
出典:出典:NPO法人ブリッジフォースマイル「全国児童養護施設 退所者トラッキング調査 2020」、文部科学省「学生の中途退学や休学等の状況について」(2014年9月)より

「お金のリテラシー」を身に着ける機会の不平等

では、なぜ中退率がそんなに高くなってしまうのでしょうか。そこには多くの要因が影響していますが、その中のひとつに「お金のリテラシー不足」があります。

Living in Peaceはこれまで、奨学金事業を中心として施設出身の子どもたちに対して資金面からの支援を行なってきました。そしてその中には、お金のリテラシーが足りないばかりに資金ショートを起こしてしまい、卒業までに必要な資金を用意できずに退学してしまう子どもが少なくありませんでした。

そもそも私たちは、「お金の使い方」をどこで学んだのでしょう。たとえば親から毎月のお小遣いを貰い、お小遣いの中でやりくりする方法を教わる、両親と一緒に買い物に行くなかで、上手な買い物方法や節約術を知る、など。そして施設の子どもたちには、こうした機会が圧倒的に不足しているのです。

家庭での「お金の教育」を受けずに育った子どもたちが、高校卒業と同時に施設を出て、バイトで生活費を賄いながら、毎月の家賃などを払いつつ、卒業まで資金ショートを起こさないようにマネープランを立てて暮らしていかなければならない。この難しさは想像に難くありません。

そこでLiving in Peaceは、子どもたちの「お金のリテラシー不足」という課題を解決するために、2018年より「お金の教育事業」をスタートさせました。

事業の内容は、小中学生を対象にお金についての早期意識づけのための講座開催と、進学希望の高校生を対象に進学シミュレーション用webシステムの提供のふたつです。

小中学生対象:お金についての早期意識づけ講座

この講座は、十分な理解と双方向性を保つため参加型のワークショップ形式としています。「100万円あったら何に使う?」などの質問を子どもたちに投げかけ、「職業と収入の関係」「良い借金・悪い借金」「トラブル時の相談」などさまざまな角度からお金に関するテーマについて話し合います。

児童養護施設の職員さんからは「施設で貯金の大切さなどは教えているが、深く掘り下げた話はなかなか難しく、それを補完できる機会になった」などの評価をいただいているほか、プログラムに参加した子どもたちからも以下のような声をいただいています。

子どもの声

・講義を聞くだけでなく、ワークを行いながらお金のことが学べて楽しかった。
・将来一人暮らしをしたいから、生活費の内訳をワークでやれて良かった。
・お金の使い方がわかるようになりました。貯金をしようと思いました。
・今まで知らなかった「将来のための投資」ということを学ぶことができた。
・聞いたこともない名前の会社の給料が高くて驚いた。

進学希望の高校生対象:進学シミュレーション用webシステムの提供

進学のお金に関する不安を解消するためには、一人一人の条件にあわせた資金プランニングが必要になります。

しかし、進学期間中のお金のやりくりは奨学金や学費、アルバイト収入や生活費、賃貸契約の更新料など、関わる要素が非常に多く、とても複雑です。また、こうした資金プランニングは多忙な児童養護施設の職員の方々の大きな負担になっています。

そこで私たちは、そうした資金プランニングを簡単に行うことができる「LIP進学シミュレーション」を開発し、施設への提供を行なっています。

「LIP進学シミュレーション」では、一人ひとりの異なるニーズに対応するために、短時間で調べることができる「かんたんシミュレーション」と、より奨学金や学費、生活費などを個々人の条件に合わせて細かくシミュレーションを行うことができる入れていく「しっかりシミュレーション」の2種類を準備しています。

シミュレーションは誰でも無料でこちらから利用できます。

開発のアドバイスをいただいた自立支援コーディネーターの方からはこんな声をいただいています。

自立支援コーディネーター 大澤 亮
今までは自作のスプレッドシートで進学後の資金計画を立てていましたが、このシミュレーションがあれば随分と楽になります。子ども自身が奨学金や学費を調べることは自立にもつながります。現場のニーズは高いので全国の児童養護施設で広まってほしいです。

自立支援コーディネーター 郡司 公太
とても簡単に資金シミュレーションができます。操作も簡単でわかりやすく、使いやすいシミュレーションです。これまでは1年ごとの収支しか計算できていませんでしたが、これを利用することで、月々までより細かい綿密なシミュレーションを立てることができるので、とても便利です。これが普及することで、進学を希望する子どもたちが増え、将来に希望が持てるようになるのではないかとわくわくしています。
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