お金の教育事業

Living in Peaceは、「社会的養護下の子どもが、今後の人生に必要なお金の知識を身に着けることにより、生まれ育った環境に関わらずもっと自由に生きる」というゴールを達成するために、お金の教育事業を行っています。

進学しづらく、中退しやすい子どもたちの状況

社会的養護下の子どもたちは、「進学しづらく、中退しやすい」状況におかれていると言われています。
児童養護施設出身者の高校卒業後の大学進学率は、以前と比べて着実に増加しています。
全国平均の約半分にあたる48.7%の子ども達が大学・短大 ・専門学校等へ進学しており、2019年度の41.1%と比べても、着実に増加しています。特に4年制大学への進学率がここ2年で20%を超えるなど、顕著です。

しかし、全高校卒業者(約99万人)の2022年度の進学率が約80%であるのに対し、児童養護施設出身者の進学率は48.7%と、依然として大きな差があります。
また、児童養護施設出身者の大学中退率は、入学1年後で7.5%、入学4年後で27.5%と依然高い水準にあります。

全国平均    児童養護施設出身者
進学率80.0%48.7%
大学中退率(入学1年後)1.95%7.5%
大学中退率(入学4年後)7%27.5

出典:認定 NPO 法人ブリッジフォースマイル「全国児童養護施設 退所者トラッキング調査 2023」
文部科学省「学生就業状況(中退者・休学者)等に関する調査(令和3年度末時点)」2022年3月

「お金のリテラシー」を身に付ける機会の不平等

では、なぜ中退率がそんなに高くなってしまうのでしょうか。多くの要因が影響していますが、その中のひとつに「お金のリテラシー不足」があります。
Living in Peaceはこれまで、奨学金事業を中心に、施設出身の子どもたちへ資金面からの支援を行ってきました。その中には、お金のリテラシー不足により資金ショートを起こし、退学してしまう子どもたちが少なくありませんでした。

そもそも私たちは、「お金の使い方」をどこで学ぶのでしょう。
たとえば親から毎月のお小遣いをもらい、その中でやりくりする方法を学ぶ、両親との買い物で、上手な買い物方法や節約術を知る、など、家庭生活を通して学びます。

しかし、施設の子どもたちは、こうした機会が圧倒的に不足しています。
家庭での「お金の教育」を受けずに育った子どもたちは、高校卒業と同時に施設を出て、バイトで生活費を賄い、毎月の家賃などを払いつつ、資金ショートを起こさないようにマネープランを立てて暮らす必要があります。この難しさは想像に難くありません。

そこでLiving in Peaceは、「お金のリテラシー不足」という課題を解決するために、2018年より「お金の教育事業」をスタートさせました。
事業の内容は、お金の教育プログラムと、進学シミュレーションの展開になります。

お金の教育プログラムでは、高校生を対象に卒業後の自立に必要なお金の知識に関する講座を、無料で行うことです。これらの講座では、卒業後に直面するお金に関する問題点や、お金との上手な付き合い方を学びます。
また、進学希望の高校生に向けて、進学シミュレーションのWebサービスも提供しています。

高校生を対象としたお金の教育プログラム

このプログラムは、卒業後に直面するであろうお金に関する問題点を理解し、賢くお金と付き合う方法を学ぶためのものです。
計6回のシリーズで構成されたこのプログラムは、現在複数の児童養護施設で展開されており、多くの生徒たちに実践的なお金の教育を提供しています。

今後、Living in Peaceは、このプログラムをさらに拡張し、オンライン講座や動画コンテンツの配信、お金に関する情報発信を行い、全国の社会的養護下の子どもたちが、情報にアクセスできるようにすることを目指しています。

この取り組みにより、より多くの高校生が、自立に必要なお金の情報に触れ、理解を深める機会を得られることを期待しています。また、この教育プログラムを通じて、子ども達が社会に出てからも経済的に自立し、安定した生活を送るための基盤を築くお手伝いをすることを目指します。

受講した子ども達の声

・リボ払いのリスクと危険性について学びました。
・消費者生活センターの話は学校でも何度も聞いた内容だったので、それぐらい困っている人や騙されている人が多いと危機感を持つことが出来ました。
・大人になる上で大切なことをたくさん知ることができました。
・制度を利用することの重要性や、年金や医療保険の支払いの大切さについて学びました。

進学シミュレーション用webシステムの提供

進学に関わるお金の不安を解消するためには、一人一人の条件に合わせた資金プランニングが重要です。
しかし、進学期間中のお金の管理は奨学金、学費、アルバイト収入、生活費、賃貸契約の更新料など、関わる要素が多く複雑です。これらの資金プランニングは、多忙な児童養護施設の職員にとっても大きな負担となっています。

この問題を解決するため、私たちは「LIP進学シミュレーション」を開発し、施設に提供しています。このシステムでは、一人ひとりの異なるニーズに応えるために、簡単に調べられる「かんたんシミュレーション」と、奨学金、学費、生活費などを個々人の条件に合わせて細かく計画する「しっかりシミュレーション」の2種類を用意しました。どちらのシミュレーションも、誰でも無料で利用することができます。

これにより、進学を希望する高校生たちは、自分の状況に合わせた資金計画を立て、安心して進学の準備を進めることが可能になります。 シミュレーションは誰でも無料でこちらから利用できます。

開発のアドバイスをいただいた自立支援コーディネーターの方からはこんな声をいただいています。

自立支援コーディネーター 大澤 亮
今までは自作のスプレッドシートで進学後の資金計画を立てていましたが、このシミュレーションがあれば随分と楽になります。子ども自身が奨学金や学費を調べることは自立にもつながります。現場のニーズは高いので全国の児童養護施設で広まってほしいです。

自立支援コーディネーター 郡司 公太
とても簡単に資金シミュレーションができます。操作も簡単でわかりやすく、使いやすいシミュレーションです。これまでは1年ごとの収支しか計算できていませんでしたが、これを利用することで、月々までより細かい綿密なシミュレーションを立てることができるので、とても便利です。これが普及することで、進学を希望する子どもたちが増え、将来に希望が持てるようになるのではないかとわくわくしています。
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