
奈良県大和高田市に、Living in Peace(以下LIP)が「永和町ベース」と呼ぶ古民家があります。こども食堂をはじめとして多種多様な活動が展開されている、地域密着型の居場所拠点です。
LIPでは、この永和町ベースの運営を担ってくれるメンバーを募集しています!
ただ、運営を担うといっても、具体的に何をするのかイメージがつかない方も多いかもしれません。そこで、実際に現場の運営を担うLIPのメンバー、池辺海咲さんと矢口摩美さんに、その活動内容や魅力を伺いました。
(取材・執筆:Living in Peace 広報)

現地でもオンラインでも活躍できる!
――LIPは、メンバー全員が本業を持ちながら、その合間の時間で活動しているNPO法人です。まずは、お二人の本業からお聞かせいただけますか?
池辺:M&Aにおける買収対象会社の財務リスクや収益力を評価し、顧客の意思決定を支援する仕事をしています。
矢口:私は看護師です。いまは障害のあるお子さんの放課後等デイサービスで、医療ケア児を中心にみています。
――矢口さんのお住まいって、たしか静岡でしたよね? (永和町ベースがある)奈良まではけっこう遠いですよね。
矢口:必要なときには現地に行きますが、回数でいうと半年に1回くらいでしょうか。ふだんはオンラインで関わっています。
――池辺さんは大阪ですから、奈良までは比較的近いですよね。現地にはよく行かれるんですか?
池辺:私も基本はオンラインでの活動が中心ですね。ただ、なるべく月1〜2回、現場に顔を出すようにしています。
といっても、現地に行っているだけなんですけど(笑)。
コンセプトは子どもの「居場所の百貨店」
――永和町ベースって、「こども食堂をやっている場所」と紹介されることが多い気がするんですが、実際のところはどうなんでしょう?
池辺:こども食堂はたしかにやっていますが、それはいくつかある活動のうちのひとつなんです。子どもの「居場所の百貨店」をコンセプトに、こども食堂だけでなく様々な居場所事業を行っています。
――百貨店、というのは?
池辺:ひとつの建物のなかに、性格の違う居場所が並んでいる。子どもが自分に合う場所を選べる、という状態をつくりたいんです。
こども食堂として食事を出す日もあれば、勉強をみる日もありますし、ただ過ごすだけの日もある感じです。

出典: LIP活動報告「2月も永和町ベースではたくさんのイベントを開催しました!」2025-03-15
――その百貨店には、いまどんな居場所が入っているんでしょうか?
矢口:こども食堂が月に2回、フードパントリーが2か月に1回。そのほかに放課後の自習室やプログラミング教室、朝と夜の居場所があります。
曜日ごとに、まったく違う顔になりますね。木曜の夜と土曜の昼では来る子も違いますし、日曜も朝と昼とで別の場所になります。

――ひとつの場所でそれだけのことをやっているところって、あまりないんじゃないですか?
池辺:あまり多くはないかもしれませんね。
というのも、たとえば公的な補助金を使って活動しようとすると、対象になる子どもや実施する主体が補助金ごとに細かく決まっていたりして、どうしても制約が多くなってしまうんですよ。
一方で永和町ベースは、寄付者の方や法人の皆さまからいただいているご支援をもとに運営しています。だから、来る子を選ばずに済むんですね。
食事も学習も居場所も、同じ建物に重ねられるんです。子どもからすれば、ここに来ればどれかはやっている。
いろいろな目的で来た人が同じ場所で顔を合わせるので、地域の交流も生まれます。そこが、ほかの居場所づくりとは少し違うところかなと思っています。

事業者、ボランティア、そしてLIPメンバーの役割分担
――これだけの居場所を、全部LIPのメンバーで回しているんですか?
池辺:いえ、それぞれの活動には、LIPのメンバーとは別に主宰している方がいます。私たちは「事業者さん」と呼んでいて、百貨店でいえばテナントとして入っていただいているイメージ。
私たちのほうは、その場所をお貸ししている側なんです。
――どういう方が事業者さんになるんですか?
矢口:基本的には、この場所を使えないか、とご相談くださった方ですね。何をやりたいのかを話し合ったうえで、それが私たちのビジョンと合致していればお貸ししています。
――それぞれの事業は、事業者さんだけで回しているんですか?
矢口:いえ、それに加えて、それぞれの事業を現地でサポートしてくださるボランティアさんがたくさんいます。
LINEのボランティアグループには100人以上が登録してくださっていて、実際に来られるのは30〜40人くらいでしょうか。地元の方が中心ですが、大阪から通ってくださる方もいます。
月に何度も参加してくださる方もいれば、半年に1回という方もいて、それぞれのペースで関わってくださっています。

出典: LIP活動報告「12月も永和町ベースではたくさんのイベントを開催しました!」2025-01-13
――では、LIPのメンバーは何をしているんでしょう?
矢口:表に立って利用者さんと接するのは、事業者さんとボランティアさんです。LIPが担っているのは、その裏側ですね。
ご寄付をいただいている企業とのやりとり、地元行政や社会福祉協議会などとの調整、届いた食材をどう運んでどう配るか。事業計画をつくったり、寄付者の方へご報告したりもします。
池辺:見学に来られた方の対応や名刺交換、ほかの団体と協業するときの窓口もLIPが持っています。
事業者さんが事業に集中できるように、基盤をつくっている感じでしょうか。

もっとサポートを充実させたい!
――その基盤って、いま何人くらいで支えているんですか?
池辺:名前を挙げていくと10人弱でしょうか。ただ、全員が常に動けるわけではありません。
――本業を持ったまま活動している以上、本業が忙しくなると動けない時期も出てきますよね。
矢口:そうですね。ミーティングも、本来は毎週月曜の21時からなんですが、いまは人手が足りていなくて、2〜3週に1回開けるかどうかというのが実際のところです。
――いまの人数で足りている、という感じではないんですね?
矢口:いまを維持するだけなら、ぎりぎりですね。
池辺:事業者さんたちの活動をきちんとサポートしていこうと思うと、やはりもっと人数がほしいです。

出典: LIP活動報告「10月も永和町ベースではたくさんのイベントを開催しました!」2024-11-12
二人の活動参加のきっかけ
――人を増やしたいというお話でしたけど、そもそもお二人は、どうやってここに加わったんですか?
池辺:大阪でできるボランティア活動をネットで調べていたら、activoというサイトでLIPが引っかかったんです。行ってみようかな、という感じで始めました。大阪で検索していたのに、実際に行ってみたら奈良だった、というオチもあるんですけど(笑)。
――どんなボランティアを探していたんですか?
池辺:内容は特に絞っていませんでした。日本に移住してきた方の公共手続きを手伝うボランティアとか、障害のある子の学習支援とか、いろいろ見ていたんです。
そのなかでLIPは、かなり精力的に活動していそうだなと思って。あとは「すべての人に、チャンスを。」というスローガンがすごく素敵だなと感じて、こども食堂に携わることになりました。

出典: LIP活動報告「2025年1月も永和町ベースではたくさんのイベントを開催しました!」2025-02-11
矢口:私はもともと、LIPで別の活動をしていたのですが、「おはようさろん」と「おかえり」の立ち上げを担当していた方が辞められるタイミングで「手伝ってほしい」と声をかけていただいて、永和町ベースに関わるようになりました。
――シンプルに人手が足りないというのもあったかもしれませんが、矢口さんが看護師だということもあって声がかかったのかもしれませんね。対人感覚があるというか。
矢口:そうですね。今では、あのとき声をかけてもらえて本当によかったな、と思っています。
現場とは違う種類のやりがい
――お二人にとって、この活動のやりがいってどこにありますか?
池辺:正直にお話しすると、やっているなという実感が湧きやすいのは、やはり現地で体を動かしているときなんですよ。
バックオフィスは事務的な作業ですし、これが直接子どもの笑顔につながっているという手応えは、得にくいところがあります。
ただ、このバックオフィスがいないと、永和町ベースという場所そのものが存続できません。LIPがいなくなったら、その上にいる事業者さんも活動できませんし、ボランティアさんもボランティアをする場所がなくなります。いま来ている子どもたちの、来る場所もなくなってしまう。
――そのうえで、やっていてよかったなと感じる瞬間は、どんなときですか?
池辺:もともと利用者という形で来ていた子が、今度はボランティアや事業者として活動に参加してくれたりすることがある。そのいいサイクルが生まれているのを目にできるのは、私にとってすごくやりがいだと感じます。
これは、個別の事業だけを見ていたら気づけないことだと思うんですよ。全体を見ている運営だからこそ得られるやりがいなのかな、と。

出典: LIP活動報告「2月も永和町ベースではたくさんのイベントを開催しました!」2025-03-15
――矢口さんは看護師として、対人支援や現場感覚を重視しているのではないかと想像しています。オンライン中心の関わり方だと、もどかしさもあるんじゃないですか?
矢口:現地に行けるのは半年に1回くらいで、回数も限られます。そこの葛藤は、正直あります。
ですが、現場で動けなくても、運営側だから得られる達成感もあると思っていて。
例えば、困難を抱えながら行政とうまくつながれていなかったご家庭が、永和町ベースの居場所事業を通じて行政とつながり、状況の改善につながった事例がありました。
地域の取り組みと行政の橋渡しとして動けるというのは、すごくやりがいがあります。私にとって大きいことだな、と。
――橋渡しも、運営だからできることですね。本業が生きていると感じる場面はありますか?
矢口:これは私ではなく、ほかのメンバーの話なのですが。例えば、ITに強いメンバーが、フードパントリーの在庫管理と経費精算のアプリをつくってくれたことがありました。
それまでは100個単位の食材を手で数えていて、どうしても数が合わなくなってしまう。経費精算も手作業だったので、現地に行けるメンバーが少ないことが、そのまま負担になっていました。
それがいまは、オンラインで完結します。静岡にいる私でも申請できるようになりました。

――多様なメンバーがいるLIPならではのエピソードですね。池辺さんは財務がご専門ですけど、その知識も現場で生きていたりするんですか?
池辺:いえ、会計の知識そのものを永和町で使っているわけではないんです(笑)。
ただ、いろんな専門を持った人と意見を交わせること自体が、私にとっての価値になっています。ふだん生活しているなかでは関われない業界の人と話せますから。
こういった活動って、「他者のために」というだけではなかなか続かないと思うんですよ。一方で、LIPでの活動は、社会貢献にプラスして、自分にとってのメリットもある。
そこは、活動への参加を検討してくださっている方々には、ぜひお伝えしたいですね。
それぞれが、得意なところに集中できる場所
――お話を伺っていると、永和町ベースって、事業者さんもボランティアさんもLIPメンバーも、それぞれ自分の役割と得意なところに集中できるようにつくられた場所なんですね。
池辺:おっしゃるとおりですね。食事を出すのは得意だけれど事務は苦手という方もいれば、子どもと接するのは得意ではないけれど何かの形で貢献したいという方もいらっしゃいます。
私自身、現場に行くと、子どもとどう接したらいいんだろうと戸惑うこともあるんですよ。それはそれで楽しいんですけど、自分が力になれるのはやっぱり裏方のほうかなと思っています。
矢口:やっていることのベースが、そもそも違いますから。表側と内側で違うからこそ、お互いに必要なんだと思います。

出典: LIP活動報告「9月も永和町ベースではたくさんのイベントを開催しました!」2024-10-13
――最後に、参加を検討してくださっている方にお伝えしたいことがあれば、聞かせてください。
池辺:土日のどちらかだけでも入っていただけたら、本業だけでは得ることが難しい「自分も社会の役に立っているんだ」という実感を得られるのではないかと思います。ぜひおすすめしたいです。
矢口:オンラインだけでも構いません。保険の手続きなど、細かい仕事もありますから。
現場にがっつり入ることだけが、関わり方ではないんですよ。もちろん、現場とこういった運営、両方に携わりたいという方も大歓迎です。
池辺:こういった作業って、将来、起業を考えている方にもおすすめかもしれませんね。一通りの事務手続きを経験できますよ。
矢口:子育て中のメンバーもいますし、お子さんと一緒にこども食堂に参加しているメンバーもいます。いろいろな関わり方があるので、どんな方でも、ぜひ。

出典: LIP活動報告「2025年1月も永和町ベースではたくさんのイベントを開催しました!」2025-02-11
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古民家の戸を開けているのは、事業者さんとボランティアさんです。その建物を維持し、関係機関と調整し、食材を運び、次の一年の計画を立てているのが、私たちLIPのメンバー。多くは平日の夜や土日に、画面越しに活動しています。
永和町ベースでは、一緒に運営を担ってくださる方を募集中です。現場に通える方も、オンラインだけの方も、ご応募をお待ちしております。
