
私たちLiving in Peace(以下、LIP)は、児童養護施設で生活する中学生から高校生の子どもたちに、世の中の様々な仕事を知ってもらう機会として、キャリア教育「おしごとリップ」を行っています。
関西おしごとリップ
10月26日(日)、関西において今期5回目となる「おしごとリップ」を開催しました。
生駒学園・高鷲学園の2施設合同で、今回は中学生4名・高校生5名と、飛び入り参加でおしごとリップ参加者OBの大学生1名が参加してくれました。
7つに分類した業界を1年間かけて子どもたちに紹介していくおしごとリップ。
今月は、「モノ以外のサービスを提供する」業界の中から、医療サービスのお仕事を紹介しました。講師は、こども関西LIPメンバーの谷口さんの奥様でもある谷口朋子さんをお招きして、クリニックの看護師として地域の中で「常に出会う患者たちとのコミュニケーション」を通した看護の重要性や、やりがいについてお話しいただきました。

まず「医療サービス」とは何か、医師や看護師にとどまらず、様々な人たちが医療を支えていることについて説明します。その後、看護師の仕事内容や、地域を支える医療クリニックでの看護業務、「やりがい」について、様々な体験談をもとにお話いただきました。子どもたちは興味深く講師の話に耳を傾けていました。
ワークでは、「看護」の視点からコミュニケーションの大切さを考える実践としてコミュニケーション手法の「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」を紹介し、グループ内で中学生の患者AとBのいずれかを選んだ後、患者A・Bの性格や状況に合わせた質問内容を個人とグループで考えました。発表では、患者役を谷口講師が、付き添いのお母さん役は谷口さんが演じ、子どもたちは各グループのメンバーで一人の看護師を演じました。リアルな患者とお母さんの会話に翻弄されながらも、子どもたちは看護師の目線にたったコミュニケーションを実践し、その難しさを経験しました。

最後は講師からのメッセージ。ご自身の会社員から出産、子育て、看護師へという経験を踏まえ、「看護師はいつからでも目指せる」「色んな事があったけど、明るく元気に身近な人に丁寧に接することで、人生は開けていく」と語りかけていただきました。
子どもたちはこれからも様々な経験をすると思いますが、明るく前向きにこれからの人生を力強く歩んでいってほしいと考えています。

<子どもたちからの感想> ※一部抜粋
- 看護師になりきって、看護師さんの大変さやしんどさが分かりました。
- 「人を助けたい」と思っても簡単に出来るわけではないからすごいと思った。自分も諦めずに挑戦しようと思った。
- ワークで、看護師さんだけに限らず、普段自分たちにとって大切なことを言っているなと思ったし、改めて看護師さんという存在がありがたいと感じた。努力は無駄にならないし、いままでの経験がこれから生きていく。
東京おしごとリップ
2025年10月26日(日)に「おしごとリップ」を開催し、筑波愛児園とクリスマス・ヴィレッジから8名の子どもたちが参加しました。今回の講義内容は「自然の恩恵を使う仕事」。昨年度の関西おしごとリップで実施して好評だった有機農産物の普及に関わる仕事について、菅野奈穂さんにお話いただきました。
菅野さんが子どもたちに伝えたいメッセージは2つ。
1つ目の「食べることは生きること。あなたの体は食べたものでできている。」についてのお話からはじまります。
一度は絶滅したトキの再生と『田んぼ』の重要性を関連づけた話題を皮切りに、生き物を育む農法や、また腸内細菌が体や脳の調子を保つために重要な働きをしていること。そして毎日少しずつ入れ替わる人体の細胞をより健康なものにするためにも、原料となる食べ物が重要であることなど、食の大切さを理解するための知識を子どもたちにも分かりやすくお話しいただきました。

ワークの時間は、「体験」と「思考」の2つのワークを行います。体験ワークでは、「体の基礎をつくるお米とお味噌汁を作って食べてみよう」をテーマに、有機のお米とお味噌、お味噌汁の出汁や具材を菅野さんに用意していただきました。衛生面に十分配慮したうえで、講義前に炊飯しておいたお米でおにぎりを3種類(玄米、7分づき米、白米)と、各自でチョイスした具材を入れた味噌玉をつくります。


玄米を食べたことがない子どもが、はじめての食感に驚いたり、出汁の粉末を入れずに、味噌本来の味を感じたいとチャレンジする子どももいたり、それぞれの味わいを楽しみます。また、ワークに入る前に安心・安全な食についての知識をインプットしていたことで、体によいものを取り入れることの重要性を、より体感できたように感じられました。

思考のワークでは、「米農家になりきって、有機米を広める方法を考えよう」をテーマに考えてもらいました。実際にごはんの食べ比べや味噌汁を飲んで体験したことで、子どもたちからは色んなアイデアが出てきました。
子どもたちに伝えたいメッセージの2点目、「自分の志を大事にしよう‼」については、菅野さんのキャリア観のなかでお話いただきました。
中学時代のBSE研究への取り組み、大学時代の有機農家さんとの出会い、農水省への就職から現在の有機米を広めるNPOへの転身と、「食で人を健康にしたい」という志を持って道を進んできた人生を振り返ります。また、農水省でのハードワーク、不妊治療での深い悩みを経て、ワークライフバランスの取れた現在の働き方を選んでいることもお話いただき、時代とともに働き方の変遷が見られる今、「働き方は自由だ!志を大切にできると道が選びやすい」と、ご自身の経験に基づいて力強く語られました。

終了後のおしごとメモには、講義を通して感じた想いが書かれており、講師のメッセージが子どもたちに伝わったことを嬉しく感じました。一部抜粋してご紹介いたします。
<子どもたちからの感想> ※一部抜粋
- 私たちは食べることで生きることができているから、食べ物をつくってくれている人たちに感謝するべき。
- 白米もおいしかったけど玄米もおいしくて安くすむなら玄米でもいいと思えた。味噌玉つくるのがとても楽しかった。
今後も「おしごとリップ」を通して、子どもたちが様々なお仕事の世界を冒険できるよう、努めてまいりますので、引き続きのご支援・ご指導のほどよろしくお願いいたします。






